よくものの例えに「何々を制する者はXXを制す」と言いますが、園芸界においては「土を制する者は園芸を制す」と言っても過言ではないと思います。特に限られている容器で栽培する鉢花においては土こそ全て、ではないでしょうか。
だからこそこの土の配合に関しては各生産者のトップシークレットの経営の根幹です。ゆえにおいそれと聞くものじゃないし、教えるものでもありません。昔々他産業から転職し、ひたすら農業書を読んでる中で”リービッヒの最小律”があり植物の成長速度や収量は、必要とされる栄養素のうち、与えられた量のもっとも少ないものにのみ影響されるとする説。ドイツの化学者・ユーストゥス・フォン・リービッヒが提唱した(ウィキペディアより一部引用)内容が今でも記憶にあります。
リービッヒの最小律を分かりやすく説明するものとして、”ドベネックの桶”が知られています。
植物の成長を桶の中に張られる水に見立て、桶を作っている板を養分・要因と見立てる。これならば、たとえ一枚の板のみがどれだけ長くとも、一番短い部分から水は溢れ出し、結局水嵩は一番短い板の高さまでとなると言う話です。
若き青年は、いかにこの桶に水を一杯に貯めることが成功の近道、そしてポテンシャルの高い花を作る必須の条件と悟り、直ぐに九州各地の堆肥場や床土工場を見て回り桶の板を探し回りました。そしてソフトシリカ(珪酸塩白土/天然ゼオライト/2:1型モンモリロナイト/俗に土の王様)との出会い。さらに二価鉄を知る。取りあえず出来た桶を当時市販(量販店や園芸店)されていた全ての園芸用土(二十数種類)と比較実証試験。生育のスピード、花の数、根の張り方を、植物の寿命などを細かく観察する。
結果分かったのは、土の良しあしは土の価格に比例する事と世の中に桶の板に値しない素材がどれだけ混入されているかでした。どんなにいい資材だからとそれだけたくさん入れたところで、無駄なこと要は桶の縁をいかにバランスよく高いレベルで揃えるかでした。その後数回の改良を経て現在に至っています。単純に嵩を増やすのは簡単です。減らすのはもっと簡単です。土は命、生産者の名刺と言ってはオーバーかもしれませんが、それくらい大事なものです。
まだまだ完成だと思っていませんが、そんな土をぜひ一度使ってみてください。