< 月刊誌 『小原流 挿花』 への過去の記載記事 >
先日、いけばな小原流の家元?本部?から蓮の注文を頂きました。もちろん直接ではなく、大阪のお花屋さんから熊本のお花屋さんを通してですが昨年を除き10年程前から継続頂いています。水ものとしての蓮は特別なんです!。生産者からすればこのような手間のかかる花はまず手掛けないのではと思うのが本音です。日持ちしない花の代名詞のように言われ、そよ風でも傷が付き、花は気まぐれで咲き、巻き葉の採花時期は一瞬。当時は葉の選び方、水揚げの仕方、水止めの仕方で日持ちがどう変化するかで花屋さんとの研究を繰り返していました。やっと商品としての蓮が確立し、少しずつですが使っていただけるようになりました。小原流の家元といつどのようにして繋がったかは定かではありません。
農業者になったばかりの頃、水もの専門で生産されていた福岡の巨匠の元に技術を学びに行ったのが始まりで、そのこだわり方は今でも記憶に残っています。口頭で教えるわけでもなく、技術を盗めとばかりに不自然に途中居なくなり、今のうちに見とけと言わんばかりの行動は、今思えば優しさだったのかと感じます。今は溶かしたロウで水止めせずに扱いやすい水漏れパテを使用するなど少し発展しましたがそのスピリットは受け継いでるつもりでいます。
蓮は特別なんです。注文を頂いた時には誰が使うのですかと何時も聞くようにしています。とても経済的に成り立つ花ではありませんので、使う方の存在を意識しないととてもやれません。だから「蓮は特別なんです」。断る場合もありますから。
今回納めた蓮は『小原流 挿花 8月号』に記載されます(勝手な思い込み?)。
「瞬!れんこん」のハウスから葉を選びます。そよ風でも傷が付くのでハウス物に限ります。
無数にある蓮の葉から目的に合ったサイズの葉を選び出します。若い葉だと日持ちせず老いた葉だとシミが付き人間で言うところの40代後半くらいの少し落ち着いた葉を選ぶのがポイントで、下のれんこんを傷つけないように慎重に作業します。切ったらすぐに水が下がるので夕暮れか雨の日にしか作業できません。巻き葉は生育が遅れている場所を重点的に探して採花します。
花はハウスの谷部より高枝切りばさみで1本ずつ探しながらの作業です。切り前に注意しながらの根気のいる作業です。
軽く洗浄し10本ずつ結束
切り口を見るとれんこんと同じように穴が開いているのがわかります。本当は空気の通る穴ですがここに水をたっぷり注入(ポンプアップ)し水が下がらないように処理し葉の隅々まで十分にいきわたらせます。葉の淵から真珠の玉みたいな水滴がこぼれてきて実に美しいがこの加減が難しい。
注入した水が逆流しないように一本ずつパテで栓をします。
巻き葉も同じように処理します。まるでジュンサイの親玉ですね。水の中に入れても撥水(ロータス効果と言い表面の細かい突起がそうさせていて工業界でも応用されている)がすごいです。
花は咲くに従って純白に近くなります。
全体を大袋で覆い、乾燥と風傷みを防ぎます。1・1・3の様式での品ぞろえで納品です。そのまま箱に入れて大阪まで送られるようです。
だから蓮は特別です。