お知らせ

2012-08-24 21:29:00

 ずっと頭の隅に残っていた牛乳がありました。所詮牛乳だけど洗練されたスタイリッシュなナデザインの牛乳。これで美味しかったら素晴らしいな、絶対売れるだろうと記憶から離れませんでした。

 種を蒔いたはいいもの、平地はまだまだ酷暑で仕事も中々はかどらず、いっその事勉強にと指導農業士と農業同友会の共同研修に参加してきました。その研修会の二番目に偶然にも出くわしました。当地区は7月の九州北部豪雨の被害が特に甚大な場所で、本来なら行くのも憚られるのですが、引率の方の英断でこんな時だから余計に行かないかんとの事で実現しました。

 ここは阿部牧場、圧倒的な個性を放つ若き後継者の阿部氏。北海道に進学するも勉強せずホッケーに明け暮れ卒業後の親から託された1000万を手に流浪の旅に。牛の他何を買ったか知らないが、現状を見る限り金額以上の目に見えない何かを得てきたことは容易に想像できる。33歳の若き氏の言葉は自信に満ち溢れ周りを圧倒する。衰退する農業界を逆にチャンスと売れる農産物とは何かを川下から追求している。完全自家飼料にこだわり200haもの牧草地を保有し美味しい牛乳が出来るのが当たり前のごとく(食品のミシュランガイドで二つ星)、この牛乳瓶のデザイン(民間に依頼)も世界的な賞を取ったくらいのこだわりよう。

 全体を見渡して上から下まで全てデザインされているが如し、将来のビジョンに向かっている情熱には強く感動を覚えました。やはり細部にもこだわれない奴は全体にもこだわれるはずがないと納得し、のんびり草をはむ牛さんを眺め心落ち着けるも束の間

 

この牛さんも赤いマフラー付けたら

と、飛ぶんです。これが阿部牧場のトレードマークです。

一本一本丁寧に製造検査し、すべてのロットで出荷二週間後までの同一製品を保持し品質管理にも重きを置き、自己防衛もしっかり。別室でヨーグルトに、焼き菓子(クッキー)も手掛けているみたいです。

自信のベースになっている全て自家育成の牧草

遠くに豪雨災害の爪痕が今でも生々しく残る。ここは土地が少し高かった為被害は軽微とのことですが、当地区の一日も早い普及をお祈りいたし、元気を与えるはずが、逆にいただきました。阿部さん、今回の研修で私の心に何かが灯りました。私も何が灯ったか知りませんが、取りあえずどうもありがとうございました。

最初に訪れた、トマトケチャップなどの加工品が売りの阿蘇ものがたりさん。

たんご山さんでヘルシーな赤牛を頂いて、最後はブドウの佐々木農園さんで研修しました。簡単ですみません。

以上。

2012-08-19 23:51:00

 まだまだ猛烈に暑い日々が続きますが、一昨日今期のパンジービオラの第一回目の播種を行いました。月遅れ盆を前にれんこんの収穫作業も完全に終わり、オリンピックの終了と共に燃え尽きてしまいました。今回のオリンピックはマイナーな種目の活躍とチームプレーが非常に印象に残りました。あまり日が当たることなく日陰で力を蓄えた人々の、一旦日の当たる処へ出ればこんなにも輝くものかと改めて思い知らされました。またこのストーリーが日本人の感性に合っているのでしょうね。植物的には見えない根っこを、大地に深く強く張ることが、大きくて立派な花を咲かせるってことなのかなと思いました。

 しかし寒さを好むこの花にはとても耐えれないこの環境ですが、10月半ばに花をお見せするにはこの時期にやらざるを得ません。すでにシステム化されたこれら作業で大規模経営されている所が大多数とは思いますが、1品種でも最大100粒程しか播かない多品種経営は面倒で、手間がかかり無駄も多いと思います。私にとっての金メダルは高冷地に負けず、立派な花をいち早く届けること。小っちゃい勝負ですが今年もやりますよ。手間がかかるところを逆手にレアな品種、希少品種を含めて価値を高めていこうと思います。これからも手作り感満載ですがメダルを目指して頑張ります。

お客様の「わぁぉ」の声と笑顔を最大のモチベーションに今期の播種が始まりました。

もうかなり使い古した発泡スチロール製のプラグトレイ。高温対策を兼ねていますし、表面のガサガサが根の発達を促します。

スタッフのYさんがこのトレイに「ギュギュッ」と播種用土を詰め込めます。温度と水分を一定にするための大事な作業です。

昨年の販売データを加味し作成した播種リストを元に冷蔵庫に保管していた種子を準備していきます。似たような名前が多く非常に高い集中力を必要としますが、シーズン中、必ず2品種程まったく違う花が上がってきます^_^;。

Yさん今年は大丈夫ですか~

真空播種機で吸わせてポンで終わりです。

昼までに約12,000粒を蒔きました。すぐに予冷庫に入庫し催芽させ、6日程で出庫します。

丁度のタイミングで宅配ピザが到着しました。モチベーションを上げる第3の理由です。おいしかった~

2012-07-26 18:35:00

 阿蘇地方を始め県内に無残な被害を残した今年の梅雨も、関西や関東に遅れて月曜にようやく明けることが出来ました。県内各地の災害復興に向け、夏休みを利用した学生ボランティア等が積極的に活動してます。一日でも早く元の状態に戻れるように頑張っているみたいですが、ことのほか被害は甚大で暫くは暑い中大変な作業が続きそうです。周りを見渡すと、皆さんこぞってトマトの栽培に例年になく積極的でしかもその作業を加速、増産を始めました。これは阿蘇産の高冷地トマトが被害を受けたとの見込みでの現象ですが、農家のしたたかさと言うか商機を嗅ぎ取る鼻のなんと素晴らしいことに感心させられます。参考にせねばバスに乗り遅れそうですが、ちょっと違和感を感じるのは何なんでしょう。

被害に合われた方たちのお見舞いと、早期の復旧をお祈りいたします。

  

 二か月を過ぎたれんこんの収穫も残り二週間あまり。梅雨明けと共に35℃超えの猛暑の中、消耗戦の状況を呈してきました。気力維持の為、相場は極力見ないようにしていますが、きっと素晴らしいと思います。

 

 いよいよパンジービオラの播種が残り一か月を切り、種子の注文の最終期限を迎えました。どの品種をどの位作るのか何時作るのかと過去の販売データを参考に熟慮を重ねるのですが、なかなか簡単には決まりません。種苗会社は付加の付く高額な商品が大量に売れれば良し、生産者は市場で高く売れる商品が安く、歩留まりの良く生産性の高さを望み、消費者は安く買えてコストパフォーマンスに優れた商品を望む。それぞれがそれぞれの立場で違う要望を持っておりこのバランスを保つのが非常に難しい。いろいろ考えた結果

 

「それぞれがそれぞれの立場で、また買いたい、売りたいと思うことを継続していける」これに尽きるのではないかと思います。最終的な主役は消費者でそれを中心に回る状況が理想のような気がします。いびつな円にならないように気を付けたいものです。

 

 そしてもう一つ、花は嗜好品。データー偏重の固い販売も良いけど作る側も、買う側も「ワクワク」この期待感を常に維持したいと思います。そこで個人育種のビオラと香るビオラ、この辺をチョイスしてみました。他にも遊び心満載の木村園芸をご期待ください。

 

 

2012-07-06 19:35:00

 連日の九州地方の大雨、特に北部九州は甚大な被害も出始めています。油断できない梅雨後半の大雨はここ熊本でも断続的に降り続き、れんこんの掘り取り作業も困難を極めております。既に6月末で当地区のハウス栽培は大方終了し、休むことなく露地れんこんへと順次推移しています。

 掘り取り作業はダバ(胸まである胴付ゴム長)を着て水に腰までつかりながらの作業です。ハウスの時にはそこまで感じなかったのですが、外に出た途端に連日の悪天候で雨が降れば合羽を着、止めば蒸すため脱ぎ雷が鳴れば恐れおののき頭を下げ身を潜め、重装備で頬を刺す蚊すら払うこともできず、終了時間まではノンストップの我慢比べです。まさに自然と共に作業をしています。今日も掘らせていただきますと謙虚な気持ちが自然と身に付き、畏敬の念を払いながらの作業はさらに人間を小さく感じさせます。ポケットに忍ばせたipodで3,000以上の曲をランダム再生し、今どきの農家を演じつつも内心ドキドキ、水に浸かっているから落ちたら間違いなくあの世ですから。

 しかしこんな仕事、他じゃやらないだろうと不思議と使命感が燃えてきて、みるみる気持ちが高揚してくるのがわかります。変な感覚なんですが、これもこの地区の後継者が8割近く育っていて切磋琢磨する活力がそうさせているのかもしれません。TPPの見えない遠い競争の前にお隣さんとの競争も大事かもですね。

 「おいおい止めちゃったの?」

近くに落雷があったのでお隣さんは早々と退散です。まだまだ欲が勝っているのか産地の都合で簡単に止めては消費地に迷惑をかけると大義を抱えて、そんな事を自分に言い聞かせながら作業続行(一般に言う農家魂?)

 自分とパートさんの身の安全に一抹の不安を感じながらもipodのボリュームをさらに上げて募る恐怖を打消しながら無事作業終了。このように日本の食料は安定供給されています。

瞬!れんこん第一部もハウス栽培の終了と共に終わりました。取引頂いたお客様ありがとうございました。第二部露地も今月20日頃には案内できると思います。よろしくお願いいたします。

(ほりまる君の吐き出しノズルに装着しているのは、泥水防止箒で泥水が顔に飛んでこないようにする自前の仕掛けです)

2012-06-19 12:34:00

 

< 月刊誌 『小原流 挿花』 への過去の記載記事 >

 先日、いけばな小原流の家元?本部?から蓮の注文を頂きました。もちろん直接ではなく、大阪のお花屋さんから熊本のお花屋さんを通してですが昨年を除き10年程前から継続頂いています。水ものとしての蓮は特別なんです!。生産者からすればこのような手間のかかる花はまず手掛けないのではと思うのが本音です。日持ちしない花の代名詞のように言われ、そよ風でも傷が付き、花は気まぐれで咲き、巻き葉の採花時期は一瞬。当時は葉の選び方、水揚げの仕方、水止めの仕方で日持ちがどう変化するかで花屋さんとの研究を繰り返していました。やっと商品としての蓮が確立し、少しずつですが使っていただけるようになりました。小原流の家元といつどのようにして繋がったかは定かではありません。

 農業者になったばかりの頃、水もの専門で生産されていた福岡の巨匠の元に技術を学びに行ったのが始まりで、そのこだわり方は今でも記憶に残っています。口頭で教えるわけでもなく、技術を盗めとばかりに不自然に途中居なくなり、今のうちに見とけと言わんばかりの行動は、今思えば優しさだったのかと感じます。今は溶かしたロウで水止めせずに扱いやすい水漏れパテを使用するなど少し発展しましたがそのスピリットは受け継いでるつもりでいます。

 蓮は特別なんです。注文を頂いた時には誰が使うのですかと何時も聞くようにしています。とても経済的に成り立つ花ではありませんので、使う方の存在を意識しないととてもやれません。だから「蓮は特別なんです」。断る場合もありますから。

今回納めた蓮は『小原流 挿花 8月号』に記載されます(勝手な思い込み?)。

「瞬!れんこん」のハウスから葉を選びます。そよ風でも傷が付くのでハウス物に限ります。

 無数にある蓮の葉から目的に合ったサイズの葉を選び出します。若い葉だと日持ちせず老いた葉だとシミが付き人間で言うところの40代後半くらいの少し落ち着いた葉を選ぶのがポイントで、下のれんこんを傷つけないように慎重に作業します。切ったらすぐに水が下がるので夕暮れか雨の日にしか作業できません。巻き葉は生育が遅れている場所を重点的に探して採花します。

花はハウスの谷部より高枝切りばさみで1本ずつ探しながらの作業です。切り前に注意しながらの根気のいる作業です。

 

軽く洗浄し10本ずつ結束

 

切り口を見るとれんこんと同じように穴が開いているのがわかります。本当は空気の通る穴ですがここに水をたっぷり注入(ポンプアップ)し水が下がらないように処理し葉の隅々まで十分にいきわたらせます。葉の淵から真珠の玉みたいな水滴がこぼれてきて実に美しいがこの加減が難しい。

注入した水が逆流しないように一本ずつパテで栓をします。

巻き葉も同じように処理します。まるでジュンサイの親玉ですね。水の中に入れても撥水(ロータス効果と言い表面の細かい突起がそうさせていて工業界でも応用されている)がすごいです。

花は咲くに従って純白に近くなります。

全体を大袋で覆い、乾燥と風傷みを防ぎます。1・1・3の様式での品ぞろえで納品です。そのまま箱に入れて大阪まで送られるようです。

だから蓮は特別です。